12という数字について

こんにち、街中で聴かれる音楽は大抵は1オクターブを12等分してできる音のシステムを利用して作られています。
この12という数字の必然性についてはここでは論じませんが、12という数字であった結果生まれる現象について4つほど考えていることを記してみます。



まず、シンメトリカルスケールが多く存在します。

これは12が約数を多くもっていることに起因します。1から11までの整数のうち、12と互いに素であるものは1,5,7,11の4つしかなく、残りの7つの数に対応する音程については、その繰り返しによって容易にシンメトリカルなスケールないしコードが発生します(長二度の繰り返しはホールトーンスケール、短三度の繰り返しはディミニッシュ7th、長三度の繰り返しはオーグメンテッドトライアドなど)。



次に、ドミナント進行が存在します。

これは僕の考えでしかありませんが、この記事でも記したように、完全四度上昇するという動きが進行感を与えることの要因の一つに、完全四度という音程の繰り返しには、12個の音全てが登場し、短三度や長三度の繰り返しのときのように、12音のうち現れる音と現れない音がある、ということがない、ということがあると思います。
これは、完全四度が半音5つ分であることを踏まえると、12と5が互いに素だということと等価です。そして、上で述べたように、そのような数は1から11の中では1と5と7と11しかありません。
これによって、強い進行感を与えるもの(四度進行とその逆向きの進行、裏コードからの解決という半音下降の進行とその逆向きの進行)とそうでないもの(それ以外)という序列が可能になっていると考えることができます。

もしもオクターブがたとえば13音や17音であったならば、1から12、もしくは1から16までのすべての数がそれぞれ13や17と互いに素なので、上で述べた論理のみから考えるならば、すべての音程の間の移動がドミナント進行のような強い進行感を生み出すことになります。



上のことに加え、ドミナント進行と裏コードが対になっています。

これは、12と互いに素なもの4つ、1,5,7,11を、それぞれ6ずつ離れたものたち、つまり1と7、5と11に分類できるということです。一般には、ある自然数と互いに素なものたちどうしの距離が、その自然数のちょうど半分になるとは限りませんが、ここではそのようなきれいな対が発生しており、裏コードの性質をこれで特徴付けることもできるかもしれません。このように2つずつに分類することで、ドミナント進行とその逆向きの進行を区別することも可能です。




最後に、1足した数13が素数です。

これは特に音楽への応用は特にないと思いますが、1から12までの12個の数について、掛け算を考えると(ただし計算結果は常に13で割った余りを考え、それによって1から12までの12個の数の中で計算を完結させることにする)、それらは、0から11までの12個の数について足し算を考えたものと全く等価になります($(\mathbb{Z}/13\mathbb{Z})^{\times} \simeq \mathbb{Z}/12\mathbb{Z}$)。
すなわち、音程を数学的に扱うときのモデル化として、足し算的な言い換えの他に、掛け算的な言い換えも可能になっています。

これは、たとえばオクターブを13等分するようなものについては不適切です。というのも、14で割った余りを考える割り算では、たとえば2に何を掛けても1にすることはできず、足し算と同じ構造を持っているとは言えません。
12等分の場合ならば、たとえば2に7を掛けると1にすることができます(13で割った余りを考えるので$2 \times 7 = 14 = 1$)。




ここで述べた話は何の根拠もないただの思いつきですが、オクターブを12個に割るという選択が結果的に音楽の構造面での面白さにいろいろな方面から貢献している、ということは確かだと思われます。








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