動画投稿『Let Me Count the Ways』

Lyle Mays のソロアルバムに収録されている "Let Me Count the Ways" という曲を弾いたものを YouTube にアップロードしました。


原曲については以下の記事でも触れています。
https://otohitofusepiano.blogspot.com/2019/12/let-me-count-ways-lyle-mays-lead-sheet.html

5平均律と7平均律におけるドミナントモーションやコルトレーンチェンジ

最近、5平均律7平均律での完全五度や長三度の様子について考察した。
さて、「ドミナントモーション」を、根音が完全五度(周波数比が$2:3$の二音の間隔)下降するもの(四度進行)、という風に広く捉え、それを5平均律や7平均律で考えるとどうなるか見てみよう。

5平均律での完全五度は、音3つ分の隔たりであった(完全四度は音2つ分)。3と5は互いに素だから、$3,6,9,\dots$と3の倍数を考えていくと、$3 \times 5 = 15$で初めて15の倍数になる。すなわち、四度進行を5回行うと初めて元の位置に戻る。図にすると以下の通り(5平均律に現れる5音をドレミソラで代用した)。


また、7平均律での完全五度は、音4つ分の隔たりであった(完全四度は音3つ分)。この場合も、4と7は互いに素だから、四度進行を7回行って初めて元の位置に戻る。図にすると以下の通り(7平均律に現れる7音をドレミファソラシで代用した)。




ところで、以前、「元のオーダーとネガティブハーモニーの拡張」という記事で、12平均律での4度進行や、いわゆる「裏コード」による半音下降の進行などは、
同じ音程の移動を繰り返し行っていくと12回目で初めて元の位置に戻る
という特徴を持っているということに言及した。1や5や7や11は12と互いに素だということでもある。

このような意味では、5平均律も7平均律も12平均律も、ドミナントモーションは同じような性質、すなわち繰り返していくとすべての調を一度ずつ巡って元の位置に戻ってくるという性質を持っていることになる。


一方、そうではない(オーダーが12ではない)音程について考えると、状況は変わる。

例えば有名なコルトレーンチェンジは長三度離れた調へ移調することを繰り返すものだが、長三度は半音4つ分であり、4を3倍すると12になるから、長三度離れた調への移調は3回やるともう元の位置に戻ってしまう。
同様に、コルトレーンの「Central Park West」のような短三度転調だと4回で元の位置に戻る。
このように、12平均律では、同じ音程の関係にある調への転調を繰り返したとき、すべての調を一巡せず、12より少ない回数で元の位置に戻ってくるものがたくさん存在する。

しかし、5平均律や7平均律では、そのようなことは起こらない。5や7は素数だから、1,2,3,4はすべて5と互いに素だし、1,2,3,4,5,6はすべて7と互いに素だから、四度進行や「半音」進行に限らず、すべての音程が、「繰り返していくとすべての調を一度ずつ巡って元の位置に戻ってくる」という性質を持っている。


よって、12平均律の時には、これをドミナントモーションのような強い進行感を持った進行の特徴づけに用いることができるという仮説を立てることができたが、5平均律や7平均律ではそのようなことは言えない。

また、5平均律や7平均律では「移調の限られた旋法」「シンメトリカルスケール」を考えることもできないし、いわゆる「コルトレーンチェンジ」や「中心軸システム」を考えることもできない。

これは5,7だけでなく、13平均律や17平均律、19平均律など、"素数"平均律であればすべてに言えることである。

7平均律のメジャーコード

以前の記事で、5平均律ではメジャーコードとしてどのような音の集まりを選ぶのが妥当かについて書いた。ここでは同じ議論を7平均律について用いてみる。


$0, 1/7, 2/7, 3/7, 4/7, 5/7, 6/7$の中から、$\log_{2} 1.5 = 0.58496250\dots, \log_{2} 1.25 = 0.32192809\dots$に近いものをそれぞれ選びたい。

$4/7 = 0.571428571428\dots$であるから、$\log_{2} 1.5$には$4/7$が一番近い。また、5平均律のときは$3/5 = 0.6$を選んだから、これは純正な完全五度より広かったが、7平均律で$4/7$を選ぶと今度は純正なものより狭いということになる。また、誤差はこちらの方がわずかに小さい。

5平均律のメジャーコード

5平均律は、インドネシアの民族音楽、ガムランで用いられるある音階などに見出されるらしい。12平均律での話をある意味合いで敷衍して、5平均律について考えてみたい。




まず平均律を考える前提の話をまとめる。

音程、つまり音高のは、周波数のに対応する。すなわち、周波数がそれぞれ$a,b,c,d$の4音A,B,C,Dがあったとき、AB間の音程とCD間の音程が等しい、ということは、$b\div a=d\div c$となることである。

1オクターブ離れた音どうしは、周波数比が1:2の関係にあることが分かっている。よって、たとえば周波数が$x$である音と$2x$である音の間のオクターブをちょうど2等分したければ、$y\div x=2x\div y$となるような$y$が周波数であるような音を持ってくればよい。これを計算すると$y=\sqrt{2}x$となる。3等分、4等分...としていきたければ、ルート(=二乗根)ではなく三乗根、四乗根...を用いればよい。
このように等分する利点は、移調が容易であるという点である。特に鍵盤楽器などは、調が変わるたびにいちいち調弦をするのはかなり大変なので、音程の間隔が等間隔だとうれしい。

一方で、ある音(基音と呼ぶ)の倍音と呼ばれる音は、周波数が基音の整数倍の音たちである。すなわち、周波数が$x$である音を基音とすると、周波数が$x,2x,3x,4x,\dots$であるような音を倍音と呼ぶ。
倍音は、楽器で基音を鳴らしたときにその中に自然に見出されたり、お互いにうなることなく響き合ったりして、響きの美しさの点で重要な音である。

ここで、倍音の間の周波数比はすべて有理数(整数$\div$整数という形で書ける数)で、一方2の累乗根は一般に無理数(整数$\div$整数では書けない数)だから、1オクターブをどんなに細かく等分しても、(1,2,4,8,16,32,...倍以外の)倍音を正確に鳴らすことはできない。
だから、適宜近い音を選んでお互いにすりあわせていく必要がある。

動画投稿『赤とんぼ』

YouTubeに新しい動画を投稿しました。


今年の7月27日に録音したもので、音はSoundcloudには既にアップロードしていたものです。



有名な山田耕筰作曲・三木露風作詞の「赤とんぼ」を自由に弾いたものです。「赤とんぼ」は個人的にも大変思い入れの強い曲で、録音機を回しながら弾いたところある程度の納得感があったのでアップロードしました。

映像は、2019年の下半期に撮った風景写真からそれらしいものを集めてきました。


よろしければ是非ご覧になってみてください。

ハーフディミニッシュについて 2

この記事では、ハーフディミニッシュに 9th を付け加えるとしたらどの音がふさわしいのかについて、考えたことを書く。


一般に 9th には♭9、♮9、♯9の3つの選択肢があることになっているが、このうち♯9はハーフディミニッシュのm3rdの音とかぶるので、考えないことにする。

すると選択肢は♭9か♮9の二種類ということになる。


どちらを選択するのがよいかの一つの判断材料として、この記事で見たように、ハーフディミニッシュがダイアトニックコードとして現れる場合にどの位置に現れるのかを思い出し、そのときのスケール上の音を選ぶことにしてみる。
ダイアトニックコードとしてハーフディミニッシュが現れるのは、
メジャースケールのVII∅7
ナチュラルマイナースケールのII∅7
ハーモニックマイナースケールのII∅7
メロディックマイナースケールのVI∅7、VII∅7
の5種類である。

12月の演奏予定

12月後半から1月にかけての演奏予定です。


12/15(日) 津田亮輔(as)カルテット @阿佐ヶ谷マンハッタン
12/16(月) 電影と少年CQ Christmas Jazz Special @渋谷 Loft Heaven
12/17(火) セッションホスト @高田馬場イントロ
12/21(土) 佐々木雄斗(tp)トリオ @旬菜居酒屋なごみ(生田)
12/22(日) 上田倫久  布施音人 duo @上智ジャズ研クリスマスコンサート
1/11(土) 一町暢洋(as)カルテット @代官山レザール

また、12/21(土)の夜にBS-TBSで放送される「Sound Inn S」という音楽番組にて、セイコーのイメージソングをセイコーサマージャズキャンプ卒業生からなるバンドで演奏している模様が映る予定です。


以下詳細です。適宜更新します。

ハーフディミニッシュについて 1

いわゆるハーフディミニッシュという和音にはいろいろ面白いことがあるので、思いついたことを何回かに分けて記したいと思う。


まず、ハーフディミニッシュとは、根音と、根音から短三度、減五度、短七度の音程にある音を集めてきた4和音のことで、マイナーセブンスの和音から五度の音を半音下げることで得られるので、マイナーセブンスフラットファイブともよく言われる。たとえばDを根音とすると: