ハーモニックメジャースケールについて

ハーモニックメジャースケールと(俗に)呼ばれているスケールがあります。Cから始めると下のようなものです。




ここでは実例は挙げませんが、その一つの解釈について述べます。

三つのマイナースケールは、次のような論理で生まれたとよく言われます。

  1. はじめに自然的短音階(ナチュラルマイナー)があった
  2. 導音(「シ」の音)から主音への解決が、自然的短音階では長二度の動きとなって大変なので、導音が半音上がり、和声的短音階(ハーモニックマイナー)になった
  3. 和声的短音階では、「ラ」と「シ」の間に増二度という隔たりがあって歌いにくいので、「ラ」も半音上がり、旋律的短音階(メロディックマイナー)になった
三つのスケールを楽譜にすれば下の通りです。



ここで、長調と短調の関係を、いわゆる「ネガティブハーモニー」や「下方倍音列」の考え方のように、音程の関係を上下ひっくり返したものだと捉えてみます。
すなわち、長三和音をなす音程は下から長三度、短三度。一方で短三和音をなす音程は上から長三度、短三度。


これをすべて拡張して、長調と短調を、音程の上下をそっくりそのまま入れ替えたものだと捉えると、メジャースケールと(ナチュラル)マイナースケールは下のような組で捉えるのがふさわしいと言えます(Cから上向きに数えた音程とGから下向きに数えた音程がそれぞれ対応しています)。



マイナースケールを普段の順番で並べるなら下の書き方がよいでしょう。





さて、上で述べたマイナースケールの派生と同じことを、メジャースケールに対してやってみます。

  1. はじめに(自然的)長音階(ナチュラルメジャー)があった
  2. 導音(「ラ」の音)から第5音(「ソ」の音)への解決が、自然的長音階では長二度の動きとなって大変なので、導音が半音下がり、和声的長音階(ハーモニックメジャー)になった
  3. 和声的長音階では、「シ」と「ラ」の間に増二度という隔たりがあって歌いにくいので、「シ」も半音下がり、旋律的長音階(メロディックメジャー)になった
三つのスケールを楽譜にすれば下の通りです。



メロディックメジャーは、メロディックマイナーを第5音から始めたものになっていますが、ハーモニックメジャーはどう転回しても長音階と三つの短音階には一致しません。

なので、通常の長音階と短音階の理論を「ネガティブ」側に翻訳しようとすると、通常の4つの音階に加えてメロディックメジャースケールも同程度に重要なものとして扱う必要がある、とも言えます。


ハーモニックメジャーは、長調と短調が共存しているような、哀愁を帯びた不思議なスケールで、 Maria Schneider の楽曲などにもたくさん登場しますが、長調と短調の共存というか、対等な扱いという意味では、ここに述べたような解釈もあり得る、という話でした。






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