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5平均律のメジャーコード

5平均律は、インドネシアの民族音楽、ガムランで用いられるある音階などに見出されるらしい。12平均律での話をある意味合いで敷衍して、5平均律について考えてみたい。




まず平均律を考える前提の話をまとめる。

音程、つまり音高のは、周波数のに対応する。すなわち、周波数がそれぞれa,b,c,dの4音A,B,C,Dがあったとき、AB間の音程とCD間の音程が等しい、ということは、b\div a=d\div cとなることである。

1オクターブ離れた音どうしは、周波数比が1:2の関係にあることが分かっている。よって、たとえば周波数がxである音と2xである音の間のオクターブをちょうど2等分したければ、y\div x=2x\div yとなるようなyが周波数であるような音を持ってくればよい。これを計算するとy=\sqrt{2}xとなる。3等分、4等分...としていきたければ、ルート(=二乗根)ではなく三乗根、四乗根...を用いればよい。
このように等分する利点は、移調が容易であるという点である。特に鍵盤楽器などは、調が変わるたびにいちいち調弦をするのはかなり大変なので、音程の間隔が等間隔だとうれしい。

一方で、ある音(基音と呼ぶ)の倍音と呼ばれる音は、周波数が基音の整数倍の音たちである。すなわち、周波数がxである音を基音とすると、周波数がx,2x,3x,4x,\dotsであるような音を倍音と呼ぶ。
倍音は、楽器で基音を鳴らしたときにその中に自然に見出されたり、お互いにうなることなく響き合ったりして、響きの美しさの点で重要な音である。

ここで、倍音の間の周波数比はすべて有理数(整数\div整数という形で書ける数)で、一方2の累乗根は一般に無理数(整数\div整数では書けない数)だから、1オクターブをどんなに細かく等分しても、(1,2,4,8,16,32,...倍以外の)倍音を正確に鳴らすことはできない。
だから、適宜近い音を選んでお互いにすりあわせていく必要がある。




さて、調性音楽で用いられる各種のスケールや和音にどの程度「理論的な妥当性」を要求するか、またその妥当性を説明する根拠をどこに置けばよいのか、という点はいろいろな考え方があるだろうが、ここでは「メジャートライアド」の起源を、ある音の第4,5,6倍音がなす和音、ということにして、それを5平均律で近似するとどうなるかについて考える。


周波数比と、音程(音高の差)と、どちらに寄せて考えてもよいが、今回は5平均律、つまり音程を等分する方を中心に考えるから、周波数比を音程に直すと都合がよい。比(掛け算・割り算)を差(足し算・引き算)に直すのは対数関数である(逆は指数関数)。
すなわち、例えば4倍音から見た6倍音、つまり周波数が1.5倍の音を、「オクターブの(音程の意味で)x倍だけ高い音」と見なしたときのxを求めたかったら、2^{x} = 1.5となるxということだから、x = \log_{2}1.5である。これは無理数で、小数に直すと\log_{2} 1.5 = 0.58496250\dotsである。
同様に、4倍音から見た5倍音は、オクターブの\log_{2} 1.25 = 0.32192809\dots倍だけ高い音となる。

さて、5平均律に登場するのは、ある音からオクターブの0, 1/5, 2/5, 3/5, 4/5倍だけ高い音と、それらとオクターブずつ離れた音たちからなるから、メジャートライアドを近似したければ、0, 1/5, 2/5, 3/5, 4/5の中から、\log_{2} 1.5 = 0.58496250\dots\log_{2} 1.25 = 0.32192809\dotsに近いものを探し出せばよい。前者は3/5 = 0.6がとても近いが、後者はかろうじて1/5 = 0.2より2/5 = 0.4の方が近いというくらいで、少し近似の精度が悪い。しかしともかく、5平均律では、ある音、その2つ上の音、さらにその1つ上の音がメジャートライアドを一番よく近似する和音ということになる。
上の図で、「ドミソ」と書いたところが、倍音列から作った「純正な」メジャートライアドであり、小さい黒い丸で書いたところが0と1の間を5等分する点である。


最後に、これのさらなる12平均律での近似をしてみる。5音平均律をメジャーペンタトニックスケール(たとえばC,D,E,G,A)で近似すると、上の意味でのメジャートライアド(ある音、その2つ上の音、さらにその1つ上の音からなる和音)は、下のような和音たちになる:

これによって何か面白いことができるかどうかは知らない。

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