さて、「ドミナントモーション」を、根音が完全五度(周波数比が2:3の二音の間隔)下降するもの(四度進行)、という風に広く捉え、それを5平均律や7平均律で考えるとどうなるか見てみよう。
5平均律での完全五度は、音3つ分の隔たりであった(完全四度は音2つ分)。3と5は互いに素だから、3,6,9,\dotsと3の倍数を考えていくと、3 \times 5 = 15で初めて15の倍数になる。すなわち、四度進行を5回行うと初めて元の位置に戻る。図にすると以下の通り(5平均律に現れる5音をドレミソラで代用した)。
また、7平均律での完全五度は、音4つ分の隔たりであった(完全四度は音3つ分)。この場合も、4と7は互いに素だから、四度進行を7回行って初めて元の位置に戻る。図にすると以下の通り(7平均律に現れる7音をドレミファソラシで代用した)。
ところで、以前、「元のオーダーとネガティブハーモニーの拡張」という記事で、12平均律での4度進行や、いわゆる「裏コード」による半音下降の進行などは、
同じ音程の移動を繰り返し行っていくと12回目で初めて元の位置に戻るという特徴を持っているということに言及した。1や5や7や11は12と互いに素だということでもある。
このような意味では、5平均律も7平均律も12平均律も、ドミナントモーションは同じような性質、すなわち繰り返していくとすべての調を一度ずつ巡って元の位置に戻ってくるという性質を持っていることになる。
一方、そうではない(オーダーが12ではない)音程について考えると、状況は変わる。
例えば有名なコルトレーンチェンジは長三度離れた調へ移調することを繰り返すものだが、長三度は半音4つ分であり、4を3倍すると12になるから、長三度離れた調への移調は3回やるともう元の位置に戻ってしまう。
同様に、コルトレーンの「Central Park West」のような短三度転調だと4回で元の位置に戻る。
このように、12平均律では、同じ音程の関係にある調への転調を繰り返したとき、すべての調を一巡せず、12より少ない回数で元の位置に戻ってくるものがたくさん存在する。
しかし、5平均律や7平均律では、そのようなことは起こらない。5や7は素数だから、1,2,3,4はすべて5と互いに素だし、1,2,3,4,5,6はすべて7と互いに素だから、四度進行や「半音」進行に限らず、すべての音程が、「繰り返していくとすべての調を一度ずつ巡って元の位置に戻ってくる」という性質を持っている。
よって、12平均律の時には、これをドミナントモーションのような強い進行感を持った進行の特徴づけに用いることができるという仮説を立てることができたが、5平均律や7平均律ではそのようなことは言えない。
また、5平均律や7平均律では「移調の限られた旋法」「シンメトリカルスケール」を考えることもできないし、いわゆる「コルトレーンチェンジ」や「中心軸システム」を考えることもできない。
これは5,7だけでなく、13平均律や17平均律、19平均律など、"素数"平均律であればすべてに言えることである。
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