和音や音程にスケールを当てはめるときの「柔軟性」について1

以前、『ある音群を含むメジャースケールの見つけ方について』という記事を書きました。

そこでは、メジャースケールというものを、五度圏での連続した7音とみなすことで(下図)、


たとえば Cメジャーの和音(C,E,G)を含むメジャースケールは、以下の三つ(F Major、C Major、G Major)のみであるということを述べました。




この事実のとらえ方はいろいろあると思いますが、一つの言い方として、「Cメジャーという和音は、F Major、C Major、G Majorの三つのキーでのみ現れうる」と言うことができます。ここで、「のみ」というのは、とりあえずメジャースケールでのみ音楽を捉えていくとした場合の話です。


さて、ここで、このこと、つまり「Cメジャーは3つのキーで現れうる」ということを、「Cメジャーの柔軟度は3である」という風に言うことにします。

この言葉遣いのもとで、ある音程をなす2音や、3音以上からなる和音について、「柔軟度」がいくつであるかをまとめるのがこの記事の目標です。



まず、2音から始めます。

半音、たとえばCとC#の2音を含むメジャースケールは、以下のように G# Major と C# Major の2つのみです。



一方、全音、たとえばCとDの2音を含むメジャースケールは、以下のように5個あります。



先ほど導入した「柔軟度」という指標を使って言えば、半音の柔軟度は2、全音の柔軟度は5です。
これらは、結果的に全く同じことですが、一つのメジャースケール、たとえばCメジャースケールの中に、半音は「BとC、EとF」の2つ、全音は「CとD、DとE、FとG、GとA、AとB」の5つ見つかる、ということから求めることもできます。


さて、全ての音程についてこれらをまとめると以下のようになります。


当たり前ですが、増4度以降はそれまでの折り返しになっています。

この中で、増4度以外の例では、可能なメジャースケールは「(5度圏の上を一つずつずらしながら)連続したいくつか」になっていますが、増4度の時だけ状況は違い、以下のようになっています。




次にいくつかの和音について見ます。この場合、たとえば始めに例としてあげたCメジャーの和音について考えると、その柔軟度を3にしている一番の要因は、CとEという長3度です。つまり、CとEが含まれている時点で、可能なメジャースケールが3つに絞られ、そのどれにも、残りの音であるGは含まれているので、Gがあるかないかは柔軟度が3であるという事実には直接は関係しません。

このような状況が発生する場合、Cメジャーという和音の「枠」は「長三度」である、と述べることにします。

以下の表では、このような状況が発生しない場合は欄を空欄にし、またそもそもその和音を含むメジャースケールが存在しない場合は柔軟度は $\infty$ であるとしました。


「枠」の列で、増4度にカッコがついているのは、その和音の中で一番「(五度圏の中で)幅が広い」ところは増4度であるが、増4度のもつ性質(可能なメジャースケールが「連続的に」広がっていない)ゆえに、和音の柔軟度と増4度音程の柔軟度が(1と2のように)異なってしまっているからです。

これらをみると、例えばセブンスやメジャーセブンス、マイナーセブンスの和音は柔軟度が1,2,3と少しずつ違うことが分かります。これは実際に演奏する上で感じられる、セブンスのもつ、音響を強力に指定するような印象、もしくは、マイナーセブンスのもつ、それ単体では何か弱いような印象、などを数値的に表しているとも言えるでしょう。


これ以外の和音についてや、その他の拡張についてはまた他の記事とすることにします。

最後に、ここで現れた用語はたった今作ったものであり、汎用性、引用元は全く無いことを断っておきます。

0 件のコメント:

コメントを投稿