キースの All The Things You Are のピアノソロ 26,27小節目における 7(M7) とラヴェル

キースジャレットトリオの All The Things You Are のトランスクリプションを少しずつ上げていますが、ピアノソロの1コーラス目の途中にでてくるある右手の展開のアイデアについて書きます。ピアノソロ1コーラス目の元の記事はこちらです。

問題の譜面は以下のページの62,63小節目です。

原曲では Bbmin→Eb7 という進行である箇所で、あるモチーフを半音上で繰り返しています。


詳しく見てみると、62小節目の1,2拍目では、Bbmin7の和音の上で、As-F-Des-Es という Db(add9) の音を弾き、63小節目では、本来行くべき Eb7 の裏コードである A7 に対して、短いツーファイブ Emin7→A7 を想定し、Emin11 の 7th, root, 9th, 11th によりできる D(add9) の音を使った、同じ音形を弾いています(短いツーファイブを想定する代わりに A7sus4→A7 という動きを想定しても同じことです)。結果的に、音形自体は半音上に上がっているわけです。

ここで、多少無理矢理にですが、ここで裏コードではなく元の和音である Eb7 を想定してみましょう。そうすると、 D の音は Eb7 に対しては M7 となり、ある意味ではここでは Eb7(M7) が聴かれることになります。

先日のラヴェルの楽曲についての記事で 7(M7) について触れましたが、7(M7) を生み出す一つの考え方として、裏コードの sus4 にあたる音を想定する、ということが考えられます(ルートからみて完全4度上の音と長7度上の音は互いに「裏」の関係にある)。ここではまさにそれが行われており、さらにその結果、ルートの(広義)4度進行に対して上に乗っているものが半音上昇しているという意味でもラヴェルの例との類似を見ることが出来ます。

この部分のみを譜面にすると以下の通りです。



上がキースのソロのうちこの部分を抜き出したもの、下がラヴェルの「高雅で感傷的なワルツ」第一曲の58小節目の2拍目と3拍目の和音です。偶然にも根音が一致していました。

ラヴェルの譜面を見ると、最高音が半音上がり、和音全体は4度進行しています。キースのソロも同様に、和音は4度進行(裏コードに行きますが)し、右手のモチーフは半音上がっています。


このように無理矢理にせよ何か結びつきを思いつくと、楽譜を読むのが更に楽しくなってきます。




6月の演奏予定の方もよろしければご覧下さい↓



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